
仙台に『インターナショナル』という名のお店を出すのは、木村浩一郎さんです。木村さんは、デザイナーでもあり、アーティストでもある人物で、世界を股に掛けながら、華々しい活躍をしています。しかし、彼が活動の拠点として置くのは仙台。しかも、彼が大学卒業後に選んだのは、実家の漆器業の後を継ぐ道です。一体どうして、彼は世界的なアーティストになったのでしょう?

アートは東京だけのもの?
通常、アートやデザインの活動をプロとして行っていこうと思えば、多くの日本人クリエイターが東京に住むこと考えないわけがありません。しかし、この木村さんの場合は、違います。彼には、彼独自の視点があり、あえて仙台に留まっています。
「まず第一に仙台はとても美しい街で、この街に誇りや憧れを抱いているということがあります。加えて、東北という土地、仙台という土地でなければできないことがあると思うのです。大都市に出て小さくまとまるよりも、この街にいる方が突き抜けた、面白いことができるんです」(木村さん)。
確かに、お店に並べられたユニークな商品の数々を見ていると、「どうしてこんなに思い切った作品を”商品として”つくることができるのだろう?」という想いがフツフツと沸きあがってきます。とにかく自由な発想が爆発していて、カタチにされている商品群は、これまでありそうでなかったものとして、一種独特の空気を辺りに放っているのです。


カップ&ソーサー

ラウンドプラス
世界を駆け巡る作品
木村浩一郎さんが手掛けてきた作品は、日本でよりむしろ海外において、高い評価を受けているようです。フランクフルトメッセ、ミラノサローネなどでの展示から波及し、イギリスのハロッズ、フランスのコレット、アメリカのダナキャラン、スイスのネスレ、ドイツのダイムラー・クライスラー、イタリアのコルソコモ、MOMA(ニューヨーク近代美術館)など、世界的にも著名な企業や団体からの注文が相次ぐという不思議な現象が起こっているのです。
「元々、自分の作品には自信はありましたけど、それが他人から評価されて、仕事につながるか、というのはまた別の話です。だから、海外の人たちから連絡が入ったときは驚きましたし、光栄で嬉しかったですね」(木村さん)


デザイナーズチェアのようでもある

かなりの高い製鉄技術が用いられている
アーティストかデザイナーか
ところで、この方は一体、どんな経歴をお持ちなのでしょう?アーティストなのか、デザイナーなのか、はたまた職人であるのか、なかなかその正体がつかめません。そんなわけで、経歴を聞いてみると意外な答えが返ってきました。
「僕は、デザインもアートも専門で学んだことはありませんでした。家業である漆器業も、子供の頃は”ダサイ、格好悪いもの”と思っていたので、近づきませんでした。僕がこういう感性を磨いたとすれば、さまざまな遊びを通してです。若い頃は、昼はパンクで夜はディスコのような毎日を送っていました。その他、人の気持ちがわかるように、農業をやってみたり、あえて格好悪いことをしてみたりといろんなことを試したんです。それが今日の自分の礎になっているんだろうと思います。人の懐に入っていく。僕はそれが大事なことだと思っているんです」(木村さん)

憧れのファッションデザイナーに
木村さんは、元々は、「DCブランドのデザイナーになりたい」そう考えていたようです。しかし、大学を卒業して受けた入社試験で、憧れていたファッションデザイナーにこんなことを言われるのです。「君は、 漆器業という立派な家業があるのに、どうしてそちらで頑張らないんですか?そちらで新しいことを試すというのはどうでしょう?」と。まさかそんなことを、自身が憧れ抜いたデザイナーから言われると予期していなかった木村さんは、そこで深く考えさせられ、「家業から新しい自分の道をつくってみよう」そう決意したのだそうです。

時代をつくる
最初は、漆器業が中心だった仕事が、今では仕事の約9割がアート関係の仕事です。仙台という地方都市にある漆器屋というスタート地点は、アートやファッション、デザインのスタンダードから考えれば、明らかに不利なポジションです。それでも、木村さんが目指すのは、アートやファッション、デザインという世界を凌駕していくことなのです。
「時代感というものは、大切にしていきたいと思っているんです。それは時代のものを一度受け入れない限り、時代をつくっていくアートなりファッションなり、新しい表現というものは生み出せないはずだからです。そして、アヴァンギャルドであるということも、僕の作品にとってはとても大切な要素です。僕はファッションが持っているパッションを超えたものをつくりたいんです」(木村さん)

ハイテクをデザインする
木村さんにとってのアヴァンギャルドとは、きっと、時代に合わせて、モノづくり、作品づくりを進化をさせていくということなのでしょう。その点で、木村さんが描き出すユニークな形状の品々は、実は、徹底的に新しい技術が使われていたりします。光造形の技術を用いた総金箔貼りのUSBメモリースティックなどは、その出来映えからメーカー幾社かから「どうやってつくったんだ。私たちにやらせて欲しい」との問い合わせが相次いだと言います。また、いかにも単純そうな蛍光色の塗料を高級に見せるかということにも、1年という歳月をかけて、あらゆる顔料と塗料を試して、調色を試みているそうです。

自由なクリエイション
「まずは、カタチありきでそこに技術が追い付くまで、僕は待ちます。こだわりのない妥協をしたものはつくりたくはないからです」(木村)
はっきりとそう言い切ってしまう潔さは、めったに聞けるものではありません。現代の日本において、自分がつくりたいものを自由に、しかも社会という仕組みにしっかりと足を下ろしながら、つくっている人物がどれだけいるでしょう。加えて彼の活動拠点は仙台という地方都市。まさに彼は、行動力と信念で夢を花開かせた地方出身/地方在住の英雄です。彼のように、出身地に根を下ろしたまま世界へと羽ばたく人が出てくると、日本各地はもっと活性化して、もっと面白くなっていくのかもしれない。彼の言葉には、そんな希望を私たちに抱かせてくれる不思議な力が宿っていました。

Text & Photos: Takafumi Suzuki
コメントをお書き下さい
老舗水晶店ー匠の技から先端技術まで:土屋華章製作所
2008年11月21日
手織り絨毯、緞通というもの:オリエンタルカーペット
2008年11月14日
デジタルで織る伝統:織元山口
2008年11月7日
知る人ぞ知る手づくりパター:山田パター工房
2008年10月31日
触れて感じて考える、将棋駒のお話:天童佐藤敬将棋店
2008年10月24日
これぞLOHAS? 自然を感じる漬物ライフ:さとみの漬物講座
2008年10月17日
デザイナーと共に歩む天童木工の今
2008年10月10日
地域の心を宿す土人形:堤人形と古賀人形
2008年10月3日
若き奏者に学ぶ尺八の世界 : 織茂サブ
2008年09月26日
幻をたずね、島を往く:五島列島
2008年09月19日







