東北石鹸佐藤工場:釜で炊かれた良質石鹸

2008年06月6日 カテゴリー: 宮城県

東北石鹸佐藤工場:釜で炊かれた良質石鹸

最近、お店には、いろいろな石鹸があふれています。美肌効果を謳うものや、アロマ、オーガニックを謳うもの、中にはカラフルなビジュアルで視覚に訴えかけるものなど、様々です。しかし、沢山の石鹸の中から本物の石鹸を探すのは、簡単なことではありません。そんな想いを抱きつつ見つけたのは、80年も昔から、ずっとつくられ続けてこられた、無添加で手づくりの石鹸です。今回は、宿泊先のファミリーロッジ旅籠屋より車を走らせ、昭和の薫りが立ちこめる東北石鹸佐藤工場を訪ねました。

坊ちゃんマークが印象的な、オリジナルロゴ

釜出し石鹸

皆さんは、釜出し石鹸という言葉を聞いたことがあるでしょうか?仙台出身者なら、なかなか有名な石鹸なので、耳にしたことがある人も多いはずです。釜出し石鹸とは、その名の通り、釜で炊いた原料から不純物を取り除き、良質の天然成分だけを取り出して、丁寧につくられた石鹸のことです。

台所でも使える石鹸

釜出し石鹸は、自然成分でできていることから、洗顔、浴用、食器洗いなど、いろいろな場面使えることがメリットなのですが、何よりも現代人にとって嬉しいのは、肌に優しいという点でしょう。実際に使ってみても、今まで使ってきた石鹸とは明らかに違う感触を感じることができるはずです。しっとりするというか、肌が若返るというか、ツッパらないというか、言葉では表現しきれない「何か」を感じさせてくれるのです。

四角に切り出される前の石鹸

切り出されて、並べられた石鹸

石鹸つくって80年

さて、この石鹸、つくっているのは東北は宮城県仙台市に拠点を構える東北石鹸佐藤工場という、渋い会社名のメーカーです。何でも80年もの長きにわたって、石鹸づくり一筋の道を追求してきたと言いますから、蓄えられた技術も知識も半端ではなさそうですね。今回、お話を聞いたのは、同社社長の佐藤吉範さんです。いかにお客さんに満足してもらえる石鹸をつくるかに心血を注ぎ、一生を捧げてこられただけあって、石鹸についてを語る彼の口調は、真剣そのものです。

「お客さんに対して嘘にならないようにつくった品質の、いい製品をできるだけ、多くの人に、手頃な価格で手に取ってもらえたらということだけを考えて、ずっと石鹸づくりをやってきたんです」(佐藤社長)。

元は、絹洗い用?

佐藤さんは佐藤工場の2代目です。同工場がオープンしたのは、大正12年のこと、そのときはまだ佐藤石鹸製造所という名称でした。良質の石鹸づくりというのは、この会社の伝統のようです。元々、先代である佐藤さんのお父さんがお勤めだったところが、絹製品用の高級石鹸を製造する工場。デリケートな絹を洗うための石鹸ですから、当然、不純物のない良質な石鹸でなくてはいけません。そんな修行時代を経ての創業だったこともあって、同工場は自然と「良質の石鹸」という、単純ながらも険しい道のりを歩いていくことになるわけです。

工場内には、古き良き時代の空気が充溢してます

積み上げられた専用の段ボール箱

オーガニックやLOHASを越えて

では、私たちが日頃、何気なく使っている石鹸は、どうなのでしょう。よくよく調べてみると、珪酸ソーダ、蛍光剤、着色料、香料、酸化防止剤などの添加物を含んでいるものがほとんどです。もっとも、今は、「オーガニック」や「LOHAS」という言葉がいたるところで目に出来る時代ですから、天然石鹸というものも、決して珍しいものではないでしょう。しかし、この東北石鹸佐藤工場がつくる石鹸ほどに、質実剛健なつくり方でつくられて、手頃な価格で売られ、そして本物感をまとった石鹸というのが、他にあるでしょうか。ちなみに、「釜出し一番石鹸」の実勢価格は、一個およそ180円から400円! 合成石鹸と比べても、ほとんど変わらないその価格から、いかに手頃なものかがわかるのではないでしょうか。

ヒミツは配合の比率にアリ

では、そのつくり方は、一体、どのようなものでしょう? まず石鹸は、牛脂とヤシ油を8対2の割合で水蒸気で溶かした原料、石鹸の素からつくられます。良質の石鹸をつくるための第一のヒミツは、この配合の比率にあるようですが、もちろんその数字は超企業秘密。その後、配合と精製された油脂を釜に送るのです。この釜でいくつかの工程が施されるのですが、「釜出し石鹸」という名称は、ここで大きな釜を用いることに由来しているわけです。では、わかりやすくこの釜での作業をひと言で説明するとどうなるでしょう。


石鹸職人としての厳しい目を光らせる佐藤社長

釜の中に炊かれる石鹸原料

14工程、8日間の手間ひま

そのひと言とは「炊く」という言葉に尽きるのかもしれません。それも5時間という長時間炊かれるわけです。その5時間の間、職人さんは手を休めることができるわけではありません。冷水を入れて温度調整をしたり、苛性ソーダや食塩水を入れたり、常に目を掛けていなければならないのです。そして、それを一日の間静かに置いて、釜から出します。こうして、石鹸の原液は汲み出されて、撹拌器で十分に練り上げられて良質な石鹸のベースができあがるという寸法です。大体のところ石鹸がどうつくられるか、イメージが沸きましたか?もっと詳しい説明をしたならば、その工程は14にものぼり、8日間を要すると言いますから、どれだけ手間と丹精が込められてつくられているのかがおわかりいただけると思います。

リーズナブルな値段の理由は?

さて、これだけ手が掛けられた石鹸です。その工程を大まかに見てしまうと、どうしてそんなにリーズナブルな値段で販売できるのかが不思議になります。

「いやあ、とにかく、多くの人にいい石鹸を使ってもらいたい。それだけなんですよ」(佐藤社長)

まさに質実剛健な、東北人の鑑! 工場名に東北の名を冠しているだけのことはあります。実直さ溢れる仕事との向き合い方には、とても好感が持てます。80年間の長きにわたり、石鹸一筋で会社を営むということを可能にしてきた理由のひとつには、確実に佐藤社長の、仕事に対する生真面目さと誠実さ、そして石鹸への深い愛情があることは間違いありません。

佐藤吉範社長

佐藤社長の趣味は、古いものや機械をいじることだそう。写真は昔の録音テープ

石鹸職人の心

「いやあ、私は、毎日毎日、石鹸をつくることが楽しくて仕方がないんです。釜から出すときに、良い石鹸が出来ていると、本当に嬉しくなるんです」(佐藤社長)

そう顔をほころばせながら語る佐藤社長は、自分が石鹸職人であるということに、強い誇りを持っているようでした。なるほど、実際、その石鹸を使ってみると、職人の魂のようなものが感じられて、何とも嬉しい気持ちになります。

注文殺到!

安くて良質、しかも無添加の石鹸。こんな存在が世間で放っておかれるわけもありません。

「今は、注文が殺到していて、つくるのが間に合っていないんですよ。一部、機械化はされていますけど、基本的には手作業ですし、うちの規模は小さいですから(笑)。これが何とかできるといいんですけどね」(佐藤社長)

なるほど、ウェブでちょっと検索するだけでも、「釜出し一番石鹸」を薬局に買いに出かけて、売り切れで悔しい想いをした」というエピソードなどをいくつかのブログに見つけることができました。うーん、そこまで人気の商品だったとは!やはり、いいものというのは消費者に自然に届くものなのでしょうか。 


石鹸「釜出し一番」

粉末石鹸「エース」

2つの商品に込められた愛情

ちなみに、東北石鹸佐藤工場でつくっている商品は、「釜出し一番石鹸」と「東北エース石鹸」のたった2商品! その限られた2つの商品に込められた、石鹸職人の愛情は並大抵のものではありません。肌にも環境にも懐にも優しい商品。本物を求める時代にぴったりマッチした、同工場のものづくりの姿勢には、感服するばかりです。読者の方でも、気になる方がいたら、是非、上の商品をネット検索してみてください。その品質の良さは、天下一品。石鹸が良質のものになると、生活の質も良いものになったような気分になるから不思議です。愛らしい坊ちゃんマーク(*)とともに病み付きになること請け合いです。いくつかのサイトはネット販売もしているようですよ。

*坊ちゃんマークは、先代である佐藤社長のお父さんが、夏目漱石の『坊ちゃん』のファンだったことから名付けられたもの。坊ちゃんは、道後温泉ホテル八千代で紹介した愛媛県の松山が舞台の小説。

釜にへばりついている石鹸

Text & Photos: Takafumi Suzuki

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