宇宙に連れていってもらう構想もしています:パン・アキモト

2007年11月1日 カテゴリー: 栃木県

宇宙に連れていってもらう構想もしています:パン・アキモト

“パン屋さん × 缶詰”

地震、津波、山火事、台風など、地球規模で次々起こる大天災。緊急災害時にどんな備えが必要となるのかは、近年、多くの人が気にしていることです。災害という状況下、きっとたくさんのコトが私たちの想像を絶するのは間違いありません。そして、今回取り上げるのが、この災害時にひと役買う商品をつくっている会社、パン・アキモトです。同社は、那須連山の麓、約60年もパン屋を営んできた、地元じゃよく知られた地域密着型の老舗パン屋。老舗パン屋と大災害? 一体、どんな関係があるのか。トップの写真から推理をめぐらせてみてください。ほら、ぼんやりイメージが沸いてきませんか?

中には黄色みがかった物体が…

ミステリアスに光る缶?

部屋に入ると、目の前に現れた紳士が、そーっと、ピカピカと鈍く光る缶を差し出してきます。中には黄色みがかった物体が入っており、透けた白い紙に包まれています。何やらミステリアスな空気がたち込めます。どうも缶詰のようだ。そう思って、漂う空気の臭いをくんくんと嗅いでみると、どこかで嗅いだことのある臭いのようです。そうです、これはパンの臭いです。ということは、これは缶詰パン?しかし、いまひとつ聞き慣れない単語です。第一、そんなものが製造できるのでしょうか。それに、この紳士は一体…。


指で触れても切れない特殊な工夫も

紳士的な立ち居振る舞いをする秋元義彦社長

ユニークなパン屋の社長?

この目の前の紳士、何を隠そう社長です。しかも、パン製造会社、株式会社パン・アキモトの社長です。ということは、さきほどの缶詰の中の黄色い物体は、「パン!?」、 回答は「イエス!」。パン・アキモトは、ここ数年、缶詰パンで徐々にその名を全国に知らしめてきた会社です。でも、一体、この缶詰パンはどんな役に立つのでしょうか? それに鮮度が命である焼きたてパンが、缶の中に入ってしまっては、きっと味が落ちてしまうだろうことは、目に見えています。なんだって、このような風変わりなアイディアを思いついたのでしょうか? しかし、ひと度、秋元義彦社長の話に耳を傾けてみると、その疑問が一気に霧散します。

パン屋さんとして災害に役立つ?

「まず、最初に缶詰パンをつくったらどうだろう?と考えるようになったキッカケは、阪神・淡路の大震災でした。1995年にあの地震が起こったとき、何とかして彼らの役に立てないかと考えました。そして、自分はパン屋さんという立場にいる人間でしたから、パン屋としての行動を考えたのです。そのときは、とにかくパンを被災地に運ぶという単純なことを思いついて、行動に移すしかありませんでした。しかし、そのとき、被災者の方々から、”非常食として、日保ちのする、美味しいパンがあればいいのに”という声を聞いたのです」(秋元社長)。

いろいろな味が選べるのも、「パンの缶詰」の魅力

缶詰め以外にあったアイディア?

そこから、秋元社長率いるパン・アキモトの試行錯誤がはじまったわけです。ふつうのパンは、せいぜい2〜3日で駄目になってしまいます。それを保存性の高い非常食にして、しかも美味しくしようというのですから、その道のりを想像すると気が遠のいていきそうです。

「あるとき、パッと閃いたアイディアがパンを缶詰にしてはどうだろうか、というアイディアでした。携帯に便利で、長期保存が可能で、雨や暖かさを気にする必要がなく、その上、美味しさもパックできるわけですから、缶詰はピッタリのアイディアでした」(秋元社長)。

焼いてから詰める? 焼いたまま入れる?

ピッタリのアイディアとはいえ、何にもないところからつくるには、難しそうなアイディアです。最初から、そんなにスムースだったのでしょうか?

「もちろん、いろいろな失敗もしましたよ。最初は真空パックにしてみてはどうだろうかとアイディアを出しました。でも、これだと、パンがつぶれてしまって駄目でした。その後は、冷凍にしてみたり、乾燥させてみたりしましたが、どれも結果は散々なもの。その他にも大小さまざま試行錯誤は行いました。そして、ついに発見した方法が、パン生地を缶に詰めて焼いて、最後に脱酸素剤を入れて密封するという方法でした。この方法は、缶を熱殺菌できて、缶内部の酸素を抜くことが可能で、防菌、防酸化の効果もあります。しかし、もうひとつ問題がありました、それは焼き上がったパンがスチール缶にへばりついてしまって、崩さずに取り出すことができないのです。そして、さらに実験していく中で、最後に思い浮かんだアイディアがあったんです」(秋元社長)。


せっせとパンをこねています

慣れた手つき

こねたパンを缶の中へ…

手作りパンが缶に収まり、後は焼くだけ

障子がアイディアの種?

缶詰パンのブレイクスルーとなったアイディア、それはとっても気になります。

「それが、そのとき思い浮かんだのが和室にある障子だったのですね。障子には、調光するだけでなく、部屋の湿度を調整するという機能もあったということを思い出したんです。それが、一枚の紙でパンを包んで焼くというアイディアです。これによって、均等に水分が保たれて、缶内の結露を防げるようになったのです。そして、意外にも、焼き上がった後に、適度なしっとり感まで生まれることになったのです」(秋元社長)

こんな努力の結果が、最長3年間もの長期保存ができながらも、美味しさが保たれる「パンの缶詰」だったのです。こうして、この商品は、1996年から販売されるに至りました。


壮観とも言える積まれた缶詰!

箱詰されて各地へ納品

ふつうのパン屋さん?

同社が本社を置く、栃木県那須塩原を訪れて感じるのは、どこにでもある、ふつうのパン屋さんであるということでした。ここから缶詰パンが生み出されているというのは、とても意外。何と言っても缶詰パンは、開発以来、単に「珍しい」「新しい」という商品ではないという評価を徐々に得るようになり、今では関東通産局長賞や中小企業庁長官賞、日経新聞社長賞まで、いろいろな賞を授与されるまでに至っているのです。現在の生産数は、年間220万缶、新潟中越地震が起きた際には、1日毎の出荷数が6000缶にも及んでいるのですから。


シンボル「パンの缶詰」が巨大オブジェに!

店内は、一見、ふつうのパン屋さん

ユニークな着眼点?

しかし、ここが普通のパン屋さんではないことは、秋元社長の着眼点のユニークさを聞いていると、クッキリとしてきます。数十年前からパン屋をライバルと見なさず、コンビニをライバル視して、パンの移動式販売をはじめることで売上げを伸ばした話や、いい意味での「熱さ」を備えた団塊の世代の営業マンを中途採用する話、自治体などを巻き込んだ缶詰パンのリユースシステムの構築などは、その良い例と言えそうです。

ガラリと変わるライン?

同社の工場で働くスタッフたちも、そんな社長のユニークなビジョンには感じるものがあるのでしょう。手際良く、活き活きと働いています。もちろんパン工場ですから朝早くからの仕事ですが、「寝ぼけマナコでやっつけ作業」なんて雰囲気はまったくありません。工場の中は、ある種、ピンと緊張感が張り巡らされ、研ぎすまされた空間になります。缶詰パンのメイン工場は、沖縄うるま工場でつくられますが、一部は、ここ那須工場でもつくられます。ふつうの焼きたてパンのラインが時間帯によって、ガラリと缶詰パンのラインに一変する様子はなんとも不思議な感じです。


ベルトに乗って流れてくる”ふつう”のパンは、缶詰パンの礎

豊富な焼きたてパンの種類

海外進出、宇宙構想?

では、この缶詰パン、この先一体どんな未来が待っているのでしょうか?

「現在は、従来の納品のほか、秋葉原のような駅の構内にある自動販売機で売るなどの実験もしています。そういう線では、今は大豆を簡易食にして駅売店で販売しているSOYJOYからは見習うべき点が多いと感じています。それから、海外への大々的な進出ということも視野に入れています。沖縄にメイン工場を設けたのは、沖縄という土地が海外への窓口だと感じてのこと。その実験として、米軍基地内の食品販売店には納品をはじめているのですよ。それから、もっと、大きなスケールの話では、うちのパンを宇宙に連れていってもらおうという構想もあります。NASAのスペースシャトルに乗せてもらえたら、欧米人の主食はパンですから、きっと喜んでもらえると思うんです」(秋元社長)。

沖縄米軍基地内の食料品店に置かれる缶詰パン

パンの飛翔?

夢あるアイディアを次から次に話してくれる秋元社長。しかし、元々、彼は空への憧れが強く、パイロットになるのが夢だったそうです。しかし、今、秋元社長はパンで空を駆け巡るという夢に想いを馳せています。「不思議とさまざまな巡り合わせ、人と人とのつながりからビジネスが発展してきている」、秋元社長はそう謙虚に語ります。しかし、同社の商品と活動を見直してみれば、やはり彼自身の「ユニークなアイディア」と「社会貢献の精神」が礎にあることは、間違いありません。パン・アキモトのパンは、「パン・パシフィック=環太平洋」と「パン」を重ねたもの。今後の同社の飛翔には、注目しておく必要がありそうです。

さすが60年続いた老舗パン屋、その味は抜群

取材メモ: 恐る恐る缶を空けてみます。すると、中から飛び出す包装されたパン。そっと取り出して口にふくんでみると、口には、フワッとした感触としっとりと味が広がります。乾パンとはまるで違う味。今どきな言い方をすれば「”ふつうに”美味しい非常食」と言えそう。ウェブ上でも購入できるので、話のネタに注文してもいいかもしれません。秋葉原駅・総武線のホームには「パンの缶詰」の自動販売機があります。気になる人はチェックを!

Text & Photos: Takafumi Suzuki

8 Comments

  1. 乾パンの缶は聞いたことがありましたが、パンそのものが缶に入っているとは驚きです。

    災害はもちろん紛争地にも是非活用されるようになるといいですね。(UNで採用してもらえるといいのですが)

    Posted by: Anonymous on November 2nd, 2007 at 1:45 pm

  2. 缶詰パンの発想は阪神大震災でしたか・・・。当時大阪で勤めていた私は、某製パンメーカーから1ヶ月程度の長期保存可能なパンが被災当日に届けられ、そのときの有難さと感動を今も忘れられません。非常食というイメージではなく、宇宙食の発想はうれしくなりますね。

    Posted by: 名無し on November 5th, 2007 at 11:52 am

  3. パン大好きです。缶詰って楽しそう。たくさんバッグに詰め込んで旅に出たい。

    Posted by: panko on November 9th, 2007 at 11:30 pm

  4. パンの缶詰を非常時の食料として購入しました!
    ちょっとつまみ食いしたら、美味しくてビックリ。
    たくさんのフレーバーもあるみたいですし、もっと手軽に色々なところでリーズナブルに買えるようになるといいなと思います。

    Posted by: Anonymous on November 30th, 2007 at 3:25 pm

  5. リサブランドの缶詰パンつくります。乞うご期待。

    Posted by: りさ on December 1st, 2007 at 12:18 pm

  6. リサの缶詰ができたようですよ。
    HPでプレゼントキャンペーンをやってますよ!
    http://www.risa-p.com/panakimoto/

    Posted by: bebe on January 7th, 2008 at 7:46 pm

  7. ↑↑↑応募しました。thanks!
    締切明日までですね。当たるとうれしいなぁ。

    Posted by: インベ on January 24th, 2008 at 3:47 pm

  8. […] 前から、鉛筆、そしてその左にある黒い物体はちょっと変わった形の鉛筆削り。となりに、欠かせないマイルドセブン8ミリとそのライター。(そうだ、いけない、taspoの申し込み書まだ送ってない...どうしたもんかな、あれ...)PingMagのはがきの上に座ってるのは鈴木からのお土産、インドの銅うさぎ。そしてミドリ色のものは息子が何年も前に幼稚園で作ったくれた物入り。そのうしろ、抗ヒスタミン剤。はい、アレルギーとともに暮らしてます。次へ参りましょう。「パンの缶詰」以前取材したパンの缶詰を作ってるパン・アキモトからいただきました。なぜかぼくのは沖縄限定版、黒糖味だそうです。いざというときに。そして、そのさらにうしろに、ベレナからのお土産、ローマ教のロウソク2本。う〜ん、これも「いざというときに」。かな? […]

    Posted by: Tom’s Blog » Blog Archive » つくえ on June 17th, 2008 at 11:56 am

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